タイの就労制度とワークパーミット(労働許可証・WP)の要点

労働許可証(ワークパーミット)とは

外国人がタイで正規就労をするには、Bビザをはじめとする就労可能なタイプのビザに加え、労働許可証の取得が必要です。ワークパーミット、ワーパミ、WPのように呼称されています。
一部の例外を除き、タイには「就労ビザ」が無いため、ビザとWPが揃って初めて就労可能となります

 

ビザは入国管理局(警察省)、労働許可証は雇用局(労働・社会福祉省)と管轄が異なりますので、それぞれ更新・維持の手続きが必要なこと、また、申請の諸条件には違いがある点に留意ください。
※「ワークパーミットを取った後はビザは自動更新される・手続き不要」といった理解は誤りです。

就労・労働の定義について

  • 収入の有無を問わず、客観的・外形的に見て"働く"行為は「労働」となる。
  • 期間の長短も問わず、1日だけの就労でも例外無し

当地の外国人就労者法において、「賃金・その他の報酬の有無に拠らず、肉体ないし知識を用いて働くこと」と規定されており、例えば無給のボランティアとして1日だけ活動するといった場合でも原則として許可を要します。

納品した機器の修理など、緊急かつ短期の就労については臨時業務届(WP10、トートー10)という書面を労働局に提出することにより通常15日間までの就労が可能となる制度があります。

労働許可証の申請条件

労働許可証は、就労者個人が申請するものではなく、タイ側企業・団体が申請者となります。特徴としては、申請者の経歴よりも所属するタイ側企業が条件をクリアしているかが重要と言えます。

申請条件は一律ではなく、以下のような要素で違いがあります。

  • 就労する組織が企業(株式会社・合資会社など)・駐在員事務所・その他の団体か
  • 外国人が持つビザの種類・カテゴリー
  • BOI(タイ投資委員会)やIEAT(タイ工業団地公社)認可企業におけるワークパーミット申請条件や手順はかなりは異なりますので別項で解説します。

企業側の条件

  • 外国人1名あたり、資本金200万バーツ(払込済の額)を有すること
  • 規制業種等では適切な許可を取得していること
  • 実際に事業を行っており、収入が発生していること(商売上の”売上げ”を有すること)
  • 外国人の就労を禁じた職種等でないこと
  • 健全な財務・タイ人の雇用実績など

外国人就労者個人の条件

  • 申請する役職・職務に対してふさわしい職歴を有していること
  • 一部職種では、特定の資格・学歴等を有すること
  • 原則、満20歳以上
  • 健康であり、労働省の指定する病気に罹患していないこと

外国人個人に関して、適切な職歴を有していれば学歴について厳密な制限は無いと言えます。一方、新卒者については就労できる役職が限定的になるため渡航前に管轄の雇用局への相談をお薦めします。

ワークパーミット申請方法(WP1とWP3)

労働許可証の申請方法は2通りあります。

WP1(トートー1)

  1. 在外タイ大使館でBビザ等を取得
  2. タイ入国
  3. 管轄の雇用局へ申請(WP1様式)
  4. ワークパーミット取得

すでに就労可のビザを持ちタイ滞在中の場合はWP1申請を行います。

WP3(トートー3)

  1. 本人入国前に事前にワークパーミットを申請(WP3様式)
  2. 受理されると「WP事前申請受理書」が発行される
  3. 「WP事前申請受理書」を在外のタイ大使館に提出してBビザ等を取得
  4. タイ入国
  5. 追加書類を提出しワークパーミットを取得する

これからタイに赴任される方の場合、本来は「WP3」のほうが一般的な申請方法ですが、日本国籍者は日タイ経済連携協定の一環として「WP事前申請受理書」(便宜上、この書面自体をWP3と呼びます)無しでビザ発給が受けられることから、WP3は馴染みが少なく、WP1申請がほとんどとなっています。

一方、WP3申請を行うメリットとして、労働省の事前審査・仮の許可取得が済んでからタイ入国となるため、入国した後にワークパーミットが取れないというトラブルを避けることができます。

なお、タイ大使館で複数回Bビザを申請したことがある方や、日本以外のタイ大使館で申請する場合は、日本国籍者であってもWP3を要求されるケースがあります。

制限事項と留意点について

許可された内容・場所のみで就労が可能

労働許可証に記載された企業・場所・職務の範囲でのみ就労できます。
顧客企業先へ訪問するといった活動は当然可能ですが、本来の職務とは関係のない企業や他人の仕事をおこなうこと、特に客観的にそれが明らかな場合は無許可就労として処罰を受ける恐れがあります。

もし複数社で就労が必要となる場合は、就労許可の追加申請を検討します。制限はありますが、内容によっては許可されるケースがあります。

ワークパーミットのキャンセル義務(退職届出義務)

所属企業での勤務を終了する際は、退職日から15日以内の申告が義務付けられています。これを怠りますと企業側への罰則(超過した期間によりますが罰金や取締役の出頭命令など)があるほか、キャンセルが済むまで外国人当人が他企業のワークパーミットを取得できないという不利益があります。

Bビザとワークパーミットの関係(ワークパーミット失効は絶対に避ける)

入国管理局で更新を受けたBビザをお持ちの場合、ワークパーミット(WP)を失効させたり、退職時にビザのキャンセルをせずWPだけキャンセルしたりすることの無いよう十分ご注意下さい。
ワークパーミットが失効するとBビザも概念上失効となり、その日からオーバーステイとなる規則となっています。給与締日や異動の内示日といった社内的な理由は考慮されません。

規則の変更・申請地によるルールの違いについて

ワークパーミット申請の条件・提出書類などは随時変更される

内閣・労働省により常に変更が行われており、1~2年内の情報でも古くなっている場合が少なくありません。この数年内にても外国人就労の定義、タイ人雇用義務、入国後何日以内に申請すべきか等の規則について変更がなされております。
本来は申請条件を満たしているにもかかわらず不可とお考えのケースなども散見され、セカンドオピニオンを取るなど最新情報の入手にお努め下さい。

申請地により異なるルール

申請は原則として企業所在地管轄の雇用局に行います。申請から発給までの日数、添付すべき書類の細則やフォームなどを各雇用局が独自に定めているケースがあります。

必要書類について

以下は一般企業におけるワークパーミット申請に必要な書類です。ケースによって異なりますので代表的な書類のみを掲載します。

本人関係書類
パスポート原本、顔写真、健康診断書(ワークパーミット取得用)
英文卒業証明書、場合により英文在職証明書など

会社側書類(雇用者)
会社登記簿 株主名簿
営業ライセンス等(税関登録・工場操業許可・飲食業など、あれば)
税務登録証(Por Por 01,09,20)
税務書類(VAT申告書、個人所得税申告書など)
社会保険料の納付書
決算書
労働局の定める申請書式

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